12 love storys
家に帰ると、
お母さんが


「お帰り。海人(かいと)くん、
来てるわよ。
手を洗ったらこれ持っていって。」


と、
剥いた梨が乗ったお皿を、
キッチンカウンターの上に
置いた。


「ええ~、
もう~止めてよ。
私が留守の間に
勝手に部屋に通さないでよ。」


「何、言ってんのよ、
今更、勝手も何もないじゃない。
晩ごはんも食べていきなさいって
言っておいてね。」


納得いかないものの、
お母さんに口で敵うわけもなく……。







「こんこんっ、入るわよ。」
ってゆーか何で自分の部屋に入るのに
ノックしなきゃなのよっ。


若干、腑に落ちないものの、
部屋に入るとーーーーー


んっ!


海人が私のベッドの上に寝転がっていた。



「ちょ、ちょっとぉ、
人のベッドでなにしてんのよぉ。
降りてってばっ!」


ベッドで突っ伏す海人に
声をかけるものの返答なし。
梨の乗ったお皿をそぉっと
サイドテーブルに置くとーー


「寝てるのか……。
疲れてるのかな?
そぉっと、
寝かせといてあげるとしようか……
なぁんて、言うと思ったら大間違いよ。
このタヌキ寝入りがっ!
起きろっ。」


と、
広い背中をバシッと叩く。


「いってぇなぁ。
誰がタヌキ寝入りだよ。
失礼だよな、ほんと。」


と、
ごろんと仰向けになりながら
ボヤく海人。


「タヌキ寝入りって聞こえてんじゃん。」


「おっ、それもそうか。」


「ねぇ、本当に起きてってば
人のベッドでくつろがないでーーー
きゃっ」


ドサッ


海人を起こそうと腕を引っ張ったら
逆に引っ張られ
倒れ込んでしまった。
海人の上にーーーー。


「ちょ、ちょっと何よ。
や、止めてよ。」


海人が私を抱きしめる。


一階のキッチンから
微かにお母さんが夕飯の支度を
している音がやけに響く。


そしてーーー


私の、
いや、
私たちの心臓の鼓動とーーーー













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