12 love storys
「これ、良かったらどうぞ。」


と、
差し出されたのは
私がさっき口にしたチョコだった。


トリュフ型をしたそれは
上品な箱にお行儀よく
収まっていた。


「私に?」


「実は最近、お菓子作りにハマっていて。
引きますよね?
こんなおじさんがお菓子作りって……。」


照れた顔でその人は言った。


「ほら、もうすぐバレンタインデーですし
逆チョコって言うんでしたっけ?
あっ、その、おじさんに貰っても
困りますよね……何て言うか……
全然、変な意味とかじゃなくて
いや、少しは下心あると言えば……
あー、何、言ってるんだろっ。
これじゃあ、まるでセクハラ親父だよ!」


「クスクス……ありがとうございます。
とても嬉しいです。」


私は素直にチョコを受け取った。












「すいません、
結局ご馳走になった上に
駅まで送っていただいて。
ありがとうございました。」


最寄りの駅まで車で送って貰うと
お礼を言ってから降りた。


「気をつけて。
いつでも、遊びに来てください。
僕はいつもあそこにいますから……。
えっとーーー待ってます。」


「はい、是非。」


一瞬、名残惜しい空気が流れる。
私はその思いを断ち切る様に
車のドアをブァンッと閉めた。
















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