12 love storys
「こちらなんか、いかがですか?」


「こちらは人気デザイナーの物なんですよ。」


「こちらですと、より体のラインが美しく見えますよ。お客様とてもスレンダーでいらっしゃるから。」


私は一人でショップに着ていた。
そう、ウェディングドレスを選ぶために。


「う~ん……。」


どれも似たり寄ったりなんだよね。
どれも同じに見えてきたなぁ。
やっぱ、一人じゃ決められないよ。
俊介がいたらなぁ。
バシッと「君にはこれが良いよ」って
言ってくれるんだけどなぁ。


「すいません……中々決めれなくて……。」


沢山並ぶドレスにゆっくりと目をやる。
これを着て花嫁は幸せになるんだなぁ。
真っ白な純白のドレスは花婿のお家色に染まりますという、意味もあるんだよね、確か。


だけど、
俊介にその話をしたら、


「染まることないよ。
むしろ、二人で染めていこう。
新しい色をさ、
好きに自由に沢山の色つかってさ、
染めていこうよ。君と僕とで。」


そう言ってくれたんだよね。
その時に、
あ、この人とならやっていけるなって。
楽しい毎日を描けそうだなって、
思ったんだっけ。


そんな事を思い出しながら、ドレスに目をやってゆくと……一着のとてもシンプルなデザインのドレスに目が止まった。


「これ、試着良いですか?」


私がそのドレスを指で差すとーーー


「お客様、こちらはお客様には少し地味すぎるかと……。お客様にはもっとこう洗練ーー」
「一度、着てみたいんです。」


ショップの人の言葉に重ねるように言った。
ショップの人は少し残念そうな顔をしたけれど、


「分かりました、ご試着のご用意いたしますね」


そういって、ドレスをフィッティングルームへと運んでくれた。







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