12 love storys
「どうぞ。」


と、言われ一人フィッティングルームに入る。


「ファスナー閉めにくいようでしたらお申し付けください。こちらで待機しておりますので。」


「はい、ありがとうございます。」


私がそう言うとフィッティングルームの扉がそっと、閉まった。


取り敢えず、着ていた服を脱ぎ、ドレスに足から入れてみる。


そして、スルスルと上に持ち上げ腕も通してみる。


ファスナーは何とか自分で閉めれた。


肩まで伸びて緩くウェーブのかかった髪をアップにして纏めてみる。


するとシンプルなデザインながらも襟具りが大胆に開いており、さらにそこからウエストラインにかけてはキュッと絞られ裾に向かって緩やかなボリュームを作りながら綺麗な半円に広がるバックサイドは少し長めになっていた。


鏡に映る自分の姿を見て、


「これだ。」


と、思った。


シンプルながらもちゃんと自己主張のあるデザイン。大人向けのウェディングドレスだった。


これこそ、私が求めてた物だと思った。


と、同時に誰よりも俊介に見せたくなった。


試着とは言え、人生で初めて着るウェディングドレス姿を俊介に見てほしかった。


「いかがでございますか?ファスナーお閉め………………。」


急に係の人の声が聞こえなくなった。


どうしたんだろ?


取り敢えず、フィッティングルームから出ようとしたら………………。


「きゃあっ。」


フィッティングルームにまた押し戻された。
なんと俊介が入ってきたのだ。


「な、なんで?」


「なんでって、そりゃ君が人生で初めて着るウェディングドレス姿を誰よりも先に見るためさ。例え試着であってもね。」


そう涼しげに言う俊介の額は汗で濡れ、
いつも爽やかな営業マンらしく、
ビシッとセットされている
髪も少し乱れていた。


恐らく、仕事を早く終わらせ
急いで駆けつけてくれたんだと思う。


それだけで胸が詰まる思いがする。


「それで、お姫様?お気に召しましたか?」


と、
いつものようにまた手を差し出しす俊介。


「もう……、王子さまはどうなのよ?姫のドレスに異議ないの?って言うか……変かな?」


私が不安げに俊介を見上げるとーーー


「最高だよ。」


と言ってニッコリ微笑むと
とびきりのキスが降ってきた。


フィッティングルームはそれなりに広かったけど、ドレスの裾が広がっているので、お互いに距離を中々縮められない。


その、僅かな距離ですらももどかしく思える。


それでも俊介のキスは止まらない。


とは言え……。


「んんっ、んんんーーーーっ。もうっ、ここフィッティングルーム。外で係の人、待ってるでしょ。」


何とか俊介を押し返し、小声で慌てて言うと。


「大丈夫。二人でゆっくり選びたいからって席、外して貰った。だから今だけは君のこの姿、僕の独り占めーーー」


「んもう…………。」


と、言おうとしたら言えなかった。
俊介の唇に言葉を飲み込まれたからだ。










フィッティングルームでのキスは
まだ少し続きそう。
着ていたドレスが
ふんわりふんわり、
ピンク色に色づき始めた。






















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