SECRET LOVE

「別に」



そう一言呟くと、テーブルから資料を手に取り、眺め始めた



めっちゃ感じ悪いんですけどっ!?



昼間の淡いトキメキも何処かに吹き飛んで、


何でこんな奴にドキドキしてたんだ、と心の底から後悔した



ムカつく!!




ムカつくけど…







やっぱりカッコイイ(涙)

流し目気味に資料に目を通している姿が、美しすぎて

腹が立つ




矛盾する自分の感情に、一人ツッコミを繰り返しながら、私はすっかり別世界に吹き飛んでいた








「……………メール」



別世界でお祭り騒ぎを起こしていた私に、ユンファが小さな声で呟いた




「……え?」


何を言ったのかわからなくて、私は聞き返した




「…………いや、何でもない」



「は?」


つい、素で返してしまった



何ゆってんの?

意味わからん




イラッとして、ユンファを見つめた



「…………何でもない」



なんやねん!ハッキリせん奴やな!!



「気になるから、言って下さい」


「何で怒ってるの」



キョトンとした顔で、ユンファが私を見た



いやいやいや、怒ってたのソッチやん



「ユンファさんが怒ってるんでしょ?」


私はぶっきらぼうにそう答えた


「…別に…怒ってない」



ハァ!?



「どうみても、ずっと怒ってるようにしか見えないですけど」


突っ掛かるように返す私に、ユンファが黙り込んでしまった



ハッ、と我に帰る



しまった…………言い方、考えたらよかった……か……?





「………ゴメン」


哀しそうな顔で呟いたユンファを見て、




胸が潰れそうに苦しくなった



違う違う、私が哀しくなりたいくらいや…!

何故お前がそんな顔になる





「……い、いいですけどっ」


何だか何にも良くないのに言ってしまった


何がいいんだ


何とも言えない微妙な空気に、帰りたくなった



やっぱり、難しいのかな

この仕事








その時



「……メール、しないの?」

ユンファがポツリと呟いた




は?メール?


私はユンファが何を言ってるのかわからなくて、



「……メール?ですか?


しますけど……」

勢いがまだ収まらず、冷たく言い返した




「…………そう」


また哀しそうな顔で言ったユンファに、




頭の中がハテナマークでパニックになった



え?

何?



何の話?これ?




頭を傾げながら、記憶の底をあさる




メール………………













……………………あ…





まさ……………か………






え!?




「…もしかして……メールアドレス、の事?」


ビックリしすぎて、普通に聞いてしまった



「………」


何とも言えない顔をして、ユンファが私から視線を反らした



ちょ…………っ





マジで……



「ご、ごめん……忘れてた……



ずっと寝てたし、バタバタしてて…」



そんなしょうもない理由だったとは…




「…電話も出ないし

連絡つかないから、メールのほうが確実だろ」




確かに


「…………」



でも、何もそんなに怒らなくても



不器用なのか何なのか知らないけど、わかりづらすぎる



「…今後は気をつけます…」


しょうもない………


私はため息をつきそうになって、
ハッとして口を押さえた



ヤバい


「………別に、いい」


良くないからそんなに怒ってたんでしょうが



「ビックリした…怒ってるから何かと思った」



てゆうか、そんな事で
何で機嫌悪くなんの?



「………」





ユンファという人が益々わからなくなる



可愛いのか、子供なのか


偉そうなのか、何なのか



だいたい、最初は女ったらしで、軽そうに見えたけど、
今では全くそんな要素も見当たらず、

かといってテレビで見るような無邪気さも、ない


ま、私に魅力がないんだろうけど、


それにしても掴み所がなさすぎて、イマイチどう接したらいいのかわからなくなる





「怒ってたわけじゃないから」


小さな声でそう呟くと、申し訳なさそうに、肩をすくめている


そんなに小さくなろうとしても、貴方デカイから無理よ



「ハハッ、ま、もういいですから」

何だか微笑ましくて、私はつい笑ってしまった



ドキドキしていた気持ちも落ち着き、
ユンファに笑顔を向けた


可愛い、年下…か



カッコイイと思っていた憧れも、冷静になってくれば
意外とセーブ出来ると感じた




この人は、私のクライアント





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