最後の願い 〜モテ男を惑わす地味女の秘密〜
「ごめんね。大丈夫?」
「はい、僕は大丈夫です」
中嶋さんが吹いたコーヒーはテーブルの上にばら撒かれたが、俺の服には付かなかった。
「おーい、フユミちゃーん。ここ拭いてくれる? コーヒー吹いちゃった」
ニューフェイスなのに、もう名前を覚えたんかい? ある意味職人だなあ、この人……
「ありがとう。君、いい子だね?」
「いいえ、仕事ですから……」
フユミちゃんは頬を赤くして戻って行った。既に中嶋さんに気持ちを持っていかれたっぽいな。
「君が急に変な冗談言うから、びっくりしちゃったよ」
「冗談じゃないです。僕は本気で言ったんです」
「またまた……。五十嵐女史って言えば、君の彼女でしょうが……」
「えっ? 知ってたんですか?」
それは本当に意外だった。
「知ってるに決まってるでしょ。君達の事は社内中みーんな知ってるよ」
「みんな、ですか?」
「うん、みんな」
そう言えばそんな事を以前も誰かに言われた気がする。田上だったかな。俺は本気にしなかったのだが。