最後の願い 〜モテ男を惑わす地味女の秘密〜
*** 恭子Side ***


お風呂かあ。さすがに痛いところを突いて来たわね、陽平君。初めは一緒に入るのは恥ずかしかったけど、今では陽平君に背中を流してもらうのが楽しみなのよね……

仕方ない、言うかあ。


「同窓会なのよ」


そう。ある日、私に往復葉書が届いた。差出人を見たら、なんとあの中島君だった。中2の時から5年間想い続けた初恋の彼。

葉書の裏を読んだら、同窓会のお知らせだった。もちろん中学の。中島君とは高校も同じだったけど、クラスが一緒だったのは中学の時だけだから。そして、クラス委員だった中島君から知らせが来てもおかしくない。私もやってたんだけど。


同窓会かあ。友達らしい友達がいなかった私には、特に会いたいと思う同級生はいない。中島君を除けば。って、何言ってるのよ、私!


中島君にだって会いたくないわよ、別に。


でもなあ……


出欠締め切りのギリギリまで迷った末に、結局は出席すると書いて返事を出したのだった。


「同窓会ですか? 大した用事じゃないですか……」

「そうかな? 普通はそうかもだけど、私は友達らしい友達はひとりもいなかったから、別に行かなくてもいいのよ」

「でも、行く事になってたんでしょ?」


むむ。鋭いな、こやつは……


「今から断るからいいの」

「いやいや、行った方がいいと思うなあ。実家なんて、一週間ずらせば済む話ですからね」

「行かないからいい」

「そう言わずに……。で、いつの同窓会ですか? 中学? 高校? ひょっとして小学校とか?」

「ちゅ、中学よ」


しまった、噛んじゃった……


「ああ、中学ですか。ん? 中学? ふーん、中学ねえ……」


陽平君め。やけに“中学”を強調するけど、感づいちゃったのかしら……

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