最後の願い 〜モテ男を惑わす地味女の秘密〜
地味女とご対面
更にその翌日の昼下がり。

俺の優秀な臭覚は、憧れの女性をキャッチした。そちらを向けば、案の定莉那先輩が、ヒールの音も軽やかに、真っ直ぐ俺に向かって歩いて来るのが見えた。隣の主任は不在だから、俺に用事があるのは明らかだ。


「川田君」

「は、はい」


莉那先輩は、背筋を伸ばした俺に顔を近付け、幾分小声で俺の名を呼んだ。周りの人間に聞こえないようにだと思うが、その近さと色っぽいハスキーボイスに、俺の心臓はバクバクと騒ぎだした。


「この間の件だけど、今夜どうかしら?」

「あ、はい。ちょっと待ってください」


この間の件とは、もちろん恭子さんに俺を引き合わせる事で間違いないと思う。この間は予定を見ずに返事をしてしまい、主任やみんなに迷惑をかけたが、今度はちゃんと自分の予定を確認した。うん、何も予定はないな。


「大丈夫です」

「そう? じゃあ、出る時声を掛けるから、よろしくね?」

「わかりました」


うーん、今度は堂々と俺に声を掛けるのか……
おそらく恭子さんも一緒だから時間を決められず、そうするんだろうとは思うが、ますます俺と莉那先輩の距離が開いたように思うのは、俺の考え過ぎだろうか……

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