恋する指先
幼なじみと友達の距離
「泣くなよ」

そう言いながら、冷たい指が私の涙をすくう。

「ずっと、ずっと後姿を追いかけてた。振り向いて欲しくて…。でも、嫌われてるのかもって思ったら、怖くて声をかけられなくて…。だから、後姿ばかりずっと見てた」

眼鏡の奥の瞳は優しく私を見つめる。

「振り向いてくれて、ありがとう。好きになってくれて、ありがとう」

想いを言葉にする。伝えなければ分からない事は沢山あるんだ。今の気持ちを素直に、ありのままの気持ちを言葉にする。そして、私の頬を優しく包み込む手をぎゅっと握りしめる。いつもより、指先が温かいのは私の頬の熱を奪ったから?
涙で濡れた瞳をあげると、榛君の顔が真っ赤になっていた。


「榛君?」

私の声に、はぁ〜と大きな溜め息を落とす。

「…美伊…お前なぁ…」

そう言いながら、榛君は再びぎゅっと抱きしめる。その大きな腕の中に私はすっぽりと隠れてしまう。
私の頭の上で、再び溜め息をつきながら


「何なの、本当に…」

ひとり言のように呟く。


「俺を殺す気なの?」

そう言って抱きしめる腕に力が入る。


「は、榛君、苦しい…んだけど」

腕の下で逃れようともがく私を、少しだけ力を抜いて抱き寄せる。





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