常初花
「まぁ、口煩い母親だけど、愛想は良い人だから」


彼女の小さな日傘の分、少し間隔を空けて並んで歩く。
緊張が緩和すればと思ってそう言ったのだが、口煩いという部分が気になったようで。


「口煩いって、どんな風に?」

「どんなって。そうだな」


口煩い、という印象は確かに色濃く残っているが。
何を言われたかというと。


実家に住んでた頃で一番母親を煩わしく思っていたのは、高校生の頃だろう。
その頃に良く怒られた言葉などを掘り起こしてみる。


「学校はとうに終わってるのに、なんでこんなに遅いんだとか、バイトは何時までだとか。晩飯はいるのかいらないのか。

いちいち電話してくるんだよな。今日は何時に帰るんだ、とか、連絡がないとすぐキレる。こっちの行動を把握してないと気が済まないみたいでさ」


そんな母親だったので卒業と同時に家を出れば、さぞかし電話が煩いだろうと覚悟していのだが。
その後はあまり口を出してくることはなくなり、些か拍子抜けだった。


と、うっかり母親の愚痴のようになってしまい、これでは余計に気が重くなったのではないかと心配したが。


「ね、それって口煩いって言う?」


彼女は不思議そうに日傘の影から僕を見た。



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