常初花
「煩くない?」

「それくらい、どこの親もっていうか…多分、それをちゃんと怒られてるから、今の貴方があるんだなって思った」


ハンカチで首の汗を拭いながら、僕は首を傾げた。


「遅くなる時もご飯がいるかいらないかも、ちゃんと連絡くれるでしょ」


言われてみれば、そうなのかもしれない。


あの母に散々言われ続けたおかげか、一緒に住んでる相手には帰りや食事の予定を知らせなければと思考が働く癖がついた。


口煩いという印象だけが残っていたが、実際はそうでもなかったのか?
うっかり彼女が母親側に付きそうで。


「いや、ちょっと待って」


明らかに母に非がありそうな過去をほじくり返す作業を試みる。


「……時間は余裕持って家を出ろ、とか?」

「当たり前のことだよね」


…その通りだ。
あの頃は思春期特有の感情が先走り、母親は口煩いというイメージだけが記憶に残っていたのだろうか。


「しっかりしたお母様なのね」

「それは、そうかな」


まぁ、母親の悪口を言うのが目的ではなかったのだし。
彼女が緊張を解いてくれたなら良いのだ。


「多分君には優しいよ。恋愛には何故か理解があったから」



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