とけていく…
『涼、お前に、ある人と会ってほしいんだ。』

 義郎は、急に改まった口調でそう言ったのだ。

「ある人? なに、再婚でもするの?」

 涼は、冗談のつもりで笑いながらそう尋ねると、義郎は狼狽えたように、咳払いをしたのだった。

「え? マジで?」

 目を丸くして驚く涼は、ますます同居はどうなのだろうか、と考えてしまう。

「べ、別に会うのはいいけど、一緒に暮らさなくてもいいじゃん。俺もいろいろ忙しいんだよ」

『しかし、独りだとやっぱりいろいろと大変だろ?』

「今まで散々放ったらかしで、今更何言ってんの」

『私は、お前が心配で…』

 義郎の"父親らしさ"を押し付けられたような気がした涼は、苛立ちを隠せなかった。

「あのさー」

 つい大きな溜息をついて義郎の言葉を遮る。

「今更、母さんなんていらねぇし。それに、由里の命日も放ったらかしだった
じゃねぇか」

 彼がそう言い放つと、彼らの間にしばしの沈黙が走る。

『…すまなかった』

 義郎は、静かにそう口にしたのだ。

「……!」

 涼の瞳孔が一瞬だけ開いていた。
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