とけていく…
 一年前。

 アメリカの赴任先で出会った二人は、彼女が親父の部下だったそうだ。最初は上司と部下の関係。しかし、歳がそんなに変わらない二人は、日本での生活や趣味の話をしているうちに、それ以上の感情を抱くようになるのに、それほど時間を必要としなかった。

 義郎は、相変わらず仕事に追われる日々を送っていた。アメリカでも日本でも変わらない、仕事人間。そんな彼にとって、笑子と過ごす休日は最高に幸せを感じていたことだろう。

 久々に感じた安らぎ、その潤いを大事にしたい…

 しかし、そんな日々を送っていた義郎に、突然の不幸がやって来る。

 今から半年前のことだ。会社のデスクで会議の資料に目を通してい時に 笑子の目の前で、突然倒れたのだ。急いで病院に運ばれ、入院となった。一命をとりとめた親父だったが、検査の嵐だった。

 血液検査などいろいろな検査の結果、肺ガンであることが判明したのだ。しかも、末期だった。すぐにガン切除の手術が行われた。しかし、開復した医師は、彼わの身体を診たその一瞬で、閉腹の判断をした。手の施しようの無いほどに、身体の細胞は蝕まれていたのだ。

< 132 / 213 >

この作品をシェア

pagetop