とけていく…
 顔をしかめながら彼は振り返る。すると、そこには正樹が余裕の顔をして、立っていたのだ。

「何で、こんなところに…!!」

「何でって… 自分の学校にいて何が悪い?」

『我が、学舎』と言わんばかりに、背後に立つ校舎を指さして正樹は言った。

「橋本先生に頼まれたんだ。正門で、可愛い高校生が待ってるから連れてきて
ほしいってね。てっきり女の子かと思ったのに、野郎なうえに、君なんてね〜


 意地悪な口調で話す正樹を涼はじろりと睨み付けた。

「ま、いっか。さ、行こう」

 しかしそんなことを全く気にする様子もない正樹は手招きをして、歩き出した。涼はかなり不満を覚えていたが、仕方なく彼のあとについて行ったのだった。

「そう言えば、この間、真紀が泣いて帰ってきたけど…」

 不意に正樹は切り出した。

「…!」

 涼の眉がピクリと反応した。

「あはは、分かり易いな」

 無言を貫いたのに、正樹は愉快そうに笑っていた。

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