とけていく…
「…あの時は、悪かった」

 絞り出すような声で涼は謝罪した。

「ホントよ。あんたは本当にサイテーよ…」

 彼に背を向けたまた、真紀はつぶやくようにそう漏らしていた。

 夏の湿った風が、青々と繁る葉を揺らす。涼はそんな風が吹く中、カバンからチケットを取り出した。

「半年後、その成果をお前に見てもらいたいんだ」

「え…?」

 涼は、振り返る真紀の手に、そのチケットをそっと握らせた。

「もしその時、俺の自信が取り戻せたら、俺の気持ちを伝えるから」

 いつものような強がった目ではなかった。決意を固めた彼の目は、少しだけ優しく微笑んでいるようにも見える。真紀は、涼の本気を受け止めるように、小さくうなずいたのだ。


 彼なりの宣戦布告は済んだ。彼の戦いはまだ続く……
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