とけていく…
もちろん涼の足は、図書館に向かう。その足は、いつの間にか早足になっていた。
自習スペースで受験勉強する真紀の姿を見つけると、軽く指で彼女の肩に触れる。
「涼…」
突然、涼の顔を見た真紀は驚きを隠せない様子だった。
「…ちょっといい?」
そんな彼女に構わず、真紀の腕を引っ張ると、彼ら二人は外に出た。
薄曇りの蒸し暑い午後。大きな木の下のベンチに二人がいるだけで、周りには誰もいなかった。
「…で、なによ」
この間のことを気にしているのか、真紀はやや攻撃的にこちらを見ていた。ところが、涼はそんなことを構わず、口を開いた。
「正樹さんから聞いてると思うけど、俺も出るから」
「…出るって、正樹が出るコンクールに?」
彼はうなずき、意を決したようにゆっくりと切り出した。
「…俺は、このコンクールで自分を取り戻したい。夢だったピアニストへの道を」
すると、真紀はあからさまにため息を吐いた。
「由里さんのための夢、でしょ? なんでそんなこと、あたしに…」
彼女は立ち上がり、中に入ろうと歩き出そうとする。涼は、後ろからその腕を掴んだ。少し、乱暴だったかもしれない。
「誰のためではなく、今度は自分のためだって言ってんだろ」
真紀の言葉を否定するように、彼女の物言わぬ背中に言い放った。彼女は少し驚いていたがまた直ぐにため息を吐き、彼に背を向けたまま足を止めた。
自習スペースで受験勉強する真紀の姿を見つけると、軽く指で彼女の肩に触れる。
「涼…」
突然、涼の顔を見た真紀は驚きを隠せない様子だった。
「…ちょっといい?」
そんな彼女に構わず、真紀の腕を引っ張ると、彼ら二人は外に出た。
薄曇りの蒸し暑い午後。大きな木の下のベンチに二人がいるだけで、周りには誰もいなかった。
「…で、なによ」
この間のことを気にしているのか、真紀はやや攻撃的にこちらを見ていた。ところが、涼はそんなことを構わず、口を開いた。
「正樹さんから聞いてると思うけど、俺も出るから」
「…出るって、正樹が出るコンクールに?」
彼はうなずき、意を決したようにゆっくりと切り出した。
「…俺は、このコンクールで自分を取り戻したい。夢だったピアニストへの道を」
すると、真紀はあからさまにため息を吐いた。
「由里さんのための夢、でしょ? なんでそんなこと、あたしに…」
彼女は立ち上がり、中に入ろうと歩き出そうとする。涼は、後ろからその腕を掴んだ。少し、乱暴だったかもしれない。
「誰のためではなく、今度は自分のためだって言ってんだろ」
真紀の言葉を否定するように、彼女の物言わぬ背中に言い放った。彼女は少し驚いていたがまた直ぐにため息を吐き、彼に背を向けたまま足を止めた。