とけていく…
(やっぱり、ダメだ…!)

 両手で勢いよく蓋をしめると、切なげにひとつ、彼の口からため息が漏れたのだった。

 ピアノは、俺を待っててはくれなかった…

 そんな風に思ったちょうどその時、インターフォンが鳴った。すっくと立ち上がりモニタで外を確認すると、カメラの向こうに立っていたのは雄介だった。

「何だ、お前。」

 ドアを開け、開口一番に涼は言った。

「よっ 一緒に学校に行こうぜ」

 めちゃくちゃ爽やかな笑顔の雄介を見た途端、彼は顔をしかめた。

(…気持ち悪ィ)

「思いっきり顔に出てるぜ」

 雄介が口を尖らせると、彼は苦笑いを浮かべながら、着替えるために奥の部屋に向かった。

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