とけていく…
十六.
 練習しかない日々は、やがて涼をクリスマスの煌びやかな季節へと運んでいた。練習帰りに街を歩くと、色とりどりの光で溢れていた。ちょうど、彼が花屋の前を通りかかると、店先には真っ赤なポインセチアの鉢がたくさん並んでいた。涼はその鉢を一つ買い、日課となっていた病院に向かった。

 病室に入ると、軽い寝息が聞こえてきた。義郎が眠っているようだった。不意に窓を見ると、窓際に小さな白いクリスマスツリーが飾られていた。

「私が飾ったのよ。きれいでしょ?」

 青い光が点滅しているそのツリーを見ていると、子供の頃に由里が幼い涼を喜ばそうと、背の高さほどな大きなツリーを一生懸命飾ってくれていた思い出が頭の中で蘇っていた。

「…きれいですね」

 少し微笑みながら、涼は言った。すると、笑子が驚いた顔を向けた。

「あなたもそんな顔できるのね」

「え?」

 彼女の言っている意味があまり良く理解できず、つい聞き返してしまう。

「だって、いつも眉間にしわ寄せて、難しい顔しかしてないから」

 フフフと笑いながら笑子がそう口にすると、涼は決まり悪そうに頭をかいた。

「もっと、今の時間を楽しみましょう」

 彼女はそう残して、ほとんど手のつけられていない食事の後片付けをしに病
室を後にした。涼は義郎の顔が見えるすぐそばに座った。

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