とけていく…
「お父上の容態はどう?」

 不意に真由美が尋ねる。涼は手を止め、目を伏せた。

「最近は、起きてる時間よりも寝てる時間の方が長いみたいで… 。病室に行っても、あまり話しができないんですよ」

「…そう。先日お見舞いに行った時、わりと元気でいらしたから。本当に、信
じられないわ。…あなたも頑張らないとね」

 彼は黙ってうなずいた。

 どんよりとした空の下、冷たい風にさらされた涼は、「うぅ、寒い…」と口にしながら背中を縮ませて歩き出した。向かった先は、言うまでもない。ガラスの自動ドアをくぐり、一目散にエレベータに乗り込んだ。

 五階のボタンを押し、ゆっくりと上昇していくのを感じながら、彼は少しだけ目を閉じた。

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