とけていく…
 着いたところは、一本の桜の木の下にある墓だった。

 その墓前に立ち、ゆっくりとしゃがみ込む。そして、目の前の石をじっと見つめた。

「由里…」

 彼がポツリとつぶやくと、目の前には由里の笑顔がちらついた。

 ここに来るのは一年ぶりだった。

「今、掃除するね」

 汲んできた水を杓ですくい、彼は墓の上から少しずつかけていった。

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