とけていく…
 いつものように退屈な授業を六時間目まで受けた後、涼は、鼻歌交じりにバスケ部活に繰り出す雄介を見送っていた。

 一人で下駄箱に向かい、上履きから黒革のローファーに履き替えると、ちょうどその真裏から向こうが三年の下駄箱であることを思い出した。

(どうせ乗せてけって図々しく言うんだよな…)

 外に出るついでに、彼は、騒がしい女子の声のする三年の下駄箱をそっと覗いてみた。

(いない、か…。ま、俺今日はバスだし)

 人を暇人扱いする大雑把な先輩の姿は見えず、構えていた涼はそのまま何事もなかったように通り過ぎ、正門に向かって歩き出した。

 駅に向かうバス停はさほど混んではいなかった。涼は何気なくバス停に並ぶ
列を見渡したが、やはりその列の中に真紀の姿は見えなかった。

 まぁ、いたところでからかわれるだけだからと、気を取り直して時刻表を見ると、バスが来るまでの時間が結構あった。涼は少し考えてから、駅に向かって歩き出していた。

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