とけていく…
 背を向け、マスターは白いカップに琥珀色したコーヒーをいれている間、彼
は時を持て余すように店内を見渡していた。

 カウンターには涼以外一人も客がおらず、後ろの四人席に何組かの客が座っていた。ビジネスマン風の男が二人で向かい合って話していたり、外の柔らかな光を浴びながら、静かに本を読んでいる若い女性や、おしゃべりを楽しみながらケーキを食べている主婦など、いろいろな客がこの空間で時を過ごしていた。

「はい、どうぞ」

 優しい香りが鼻腔に届き、涼は「いただきます」と小さくあいさつしてからカップに手をつけた。

「CD、わざわざありがとうね。学校で真紀に渡せれば、楽だっただろうに」

「いえ。学年が違うと、なかなか会うことも少ないですよ」

 涼はそう言いながら、ここ一週間、真紀に一度も会うことがなかったことに気づいたのだ。

「先週は特にね」

 マスターが小さく笑いながらそう言うと、人差し指を上にさし、付け加える。

「先週から、風邪をこじらせてて、休んでるんだ」

 マスターの言葉に、涼は「どうりで…」とつぶやき、笑った。

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