とけていく…
「紫がさー、俺のこと好きだって…」

 数時間たったその日の夜、ベッドに寄りかかりながらしていた電話でも、さっきの出来事での戸惑いを隠せられない様子だった。

『知ってるぜ』

 相手の男は、ケロっとしてそう言った。もちろん、雄介だ。

「…なんと?」

 あまりにもあっなく答える彼に、涼は目を点にして聞き返していた。

『中学のクラスのほとんどが知ってる事実だっつーの。お前は姉ちゃん以外、キョーミなかったから知らなかったんだろ〜』

「え、そうなの?」

 初めて知る事実に、涼は心底驚いていた。紫とは女子の中では割と仲良くしていた方だったが、彼女をそんな風に考えたことなど、一度もなかったからだ。

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