ジレンマ(仮)





「なんだ、亮太を待っていたのか」


「そう、俺」



にこやかに言うカケルに対し、冷めた口調で言う亮太。

でも昔から2人はこうだったから、今更何とも思わない。

カケルも気にしてないみたいで、いつも通り亮太と接している。

私はそんな2人をいつも眺めるだけ。



「じゃあ俺も一緒に帰るから、ちょっと待ってて」


「え?」



突然のカケルの言葉に、変な声が出てしまった。

不思議そうに、カケルは私を見た。

私は一瞬、心臓が飛び跳ねたのを隠しながらできるだけ笑顔で答えた。



「カケル、部活は?生徒会とかないの?」


「あぁ、今日はもう終わり。雨が酷いから、今日はもう帰れって・・・沙月、俺も一緒に帰ったらダメ?」



カケルは私の顔を覗き込む様にしながら聞いてきた。

なにその甘えた様な子犬顏は・・・。

そんな顔で見ないでよ・・・。

心臓の音が、頭にまで響いてきた。
顔もみるみる赤くなり始めたのが自分でも分かった。

私はそんな自分に気付かれない様に、下を向きながら腕を組んで、ゔーんと考えている風な振りをした。

でも心臓がバクバク鳴っていて、全く何も考えられなかった。



「だめ」



ふと、横から冷めた声が聞こえてきた。

声の主は、亮太だった。



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