202号室の、お兄さん☆【完】

「うん。……私で嫌でなければ」
色っぽく耳元で囁くと、皇汰は何度も何度も頷いた。


「じゃ、明日、みかど達を尾行しつつデートを楽しもうね」
甘く誘惑するように微笑むと、皇汰はだらしなく笑う。

……皇汰、正直すぎる表情が可愛い。



只今、私の部屋にて、明日の打ち合わせ中だったのですが、

千景ちゃんにデートに誘われた皇汰は、集中力を切らしたのかスマホを取り出して、何か検索し始めた。


「やっぱりあの岳理って人、金持ちの坊やなんだね」

調べたのは『孔礼寺』だった。
室町時代から続くと言われている云々が書かれたページをどんどんスライドしていく。
勿論、全て読んで理解してからだから驚異のスピードだ。


「そうなのよ。本家の坊ちゃまなのよねぇ。ただ、亡くなられたお爺様が、葉瀬川さんを跡取りにって遺言したらしくてさぁ。
葉瀬川さんは面倒だからサッサとマンション買って逃亡。
でも坊ちゃまは跡取りが嫌で探偵とかしてるのよねぇ」

なる程。あの2人、親戚だったのですね。

「あれ、本当に探偵してんの?」

皇汰の推理力が、また光り出した。


「興信所の人よりも、尾行下手だけど」


と。
< 107 / 574 >

この作品をシェア

pagetop