202号室の、お兄さん☆【完】
「うん。……私で嫌でなければ」
色っぽく耳元で囁くと、皇汰は何度も何度も頷いた。
「じゃ、明日、みかど達を尾行しつつデートを楽しもうね」
甘く誘惑するように微笑むと、皇汰はだらしなく笑う。
……皇汰、正直すぎる表情が可愛い。
只今、私の部屋にて、明日の打ち合わせ中だったのですが、
千景ちゃんにデートに誘われた皇汰は、集中力を切らしたのかスマホを取り出して、何か検索し始めた。
「やっぱりあの岳理って人、金持ちの坊やなんだね」
調べたのは『孔礼寺』だった。
室町時代から続くと言われている云々が書かれたページをどんどんスライドしていく。
勿論、全て読んで理解してからだから驚異のスピードだ。
「そうなのよ。本家の坊ちゃまなのよねぇ。ただ、亡くなられたお爺様が、葉瀬川さんを跡取りにって遺言したらしくてさぁ。
葉瀬川さんは面倒だからサッサとマンション買って逃亡。
でも坊ちゃまは跡取りが嫌で探偵とかしてるのよねぇ」
なる程。あの2人、親戚だったのですね。
「あれ、本当に探偵してんの?」
皇汰の推理力が、また光り出した。
「興信所の人よりも、尾行下手だけど」
と。