202号室の、お兄さん☆【完】
「金曜日、予定通りキッチンの点検をするんでお休みにしますね」
「はい」

今日はいつもより忙しかったので、最後まで残ってお兄さんと一緒に帰りました。

気がつけば、桜は散り、夜の道に絨毯を作っています。
月明かりと電灯だけの静かな道は、とてもノスタルジックで綺麗です。



「あ、理人さんだ」

近づいて行くと、困り顔のリヒトさんと、モデルのように綺麗な美女2人が、花忘荘の隣の高級マンション前で話し込んでいました。


「きゃー! リヒトったらお金持ちー!」
「すごーいっ こんな高級マンションに住んでるのぉ?」

黄色い声、と言いましょうか、甘ったるく媚びた声が夜の空に響いています。


「そんな事ないよ。双子の弟と一緒に住んでるからギリギリなんだ」

そう言って、ちょっとリヒトさんは申し訳無さそうに首を傾げた。


「やっぱ女の子をこんな夜に帰らせるのは危ないよ。俺、送るかタクシー代出すよ?」

そう甘く囁くように言うと、美女2人は吐息を漏らすような溜め息を尽きました。


「いいの! リヒトに残業させちゃったんだし、これ以上迷惑かけれないわっ」
「私たちが、リヒトの家見たかっただけなの。まだ10時過ぎだし大丈夫よ」
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