202号室の、お兄さん☆【完】

涼しい顔をして、仕事に戻るお兄さんを、ついつい凝視してしまう。
「ん? どうしました?」

「あ、いえ」

お兄さんは私のおでこを指でツンツンしてくる。
しかめっ面になっていたかな?
「もしかしなくても、誘ったの、迷惑でした!?」

ハッと気づいたお兄さんが、少し慌て出した。

「とんでもないです! 私なんか恐れ多いぐらいですよ。

……ただ、」

「ただ?」

「で、デートって私、経験ないからっ」

「え?」

お兄さんが目をまん丸にする。
うわー! 自分のバカー!

「いや、あの、基準に悩んでてっ 自分で考えてるのですが、分からなくて、携帯辞書で調べたら『男女が待ち合わせて出かけること』がデートらしくて、でも下心ないし」

「下心?」

お兄さんが更に首を傾げる。

うわーん! やっぱり一分前に戻して下さーい!
何で自爆しちゃうの? 私。


私が真っ青になっていく中で、
お兄さんの顔は仄かにピンクから真っ赤に染まっていく。


「……お兄さん?」

「――っす」

「ほ?」


「僕もデートって生まれて初めて、です……」

「ええ!?」




「しかもっ 自分から誘ってしまいましたっ!」

しまったって、お兄さん……。
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