202号室の、お兄さん☆【完】

岳理さんは無言のまま、到着した段ボールを黙々と車に積んで行きます。

――なんと答えれば、正解だったのですか?

なんて聞けない雰囲気です。


やっぱり、岳理さんは良く分かりません。
お兄さんのそばと違って、とても居心地が悪い……。



「じゃあ、俺が先に帰って段ボール分けとくよ」

助手席に皇汰が段ボールを抱えて座った。後ろの席は段ボールでぎゅうぎゅうです。
でも残りの段ボールは、バイト帰りに持って帰れるぐらいに減りました。


「うん。お願いね」

「じゃあ、私は集まりに戻らせてもらうよ」

「儂も仕事に戻るぞ」


「はいっ! 忙しいのにありがとうございました」

そして振り返ると、とっくに車は発進していました。

――いつも、お礼を言い忘れてしまいます。







バイトに戻ったら、お客様は大分減っていて、ピークは過ぎていました。

モカさん達は既に各々のソファに眠っていました。



「ありがとうございました。お礼にこれを」

お兄さんが冷蔵庫から出してくれたのは、あのベルギーのチョコレートです。
可愛い缶を開けると、銀紙に包まれたキスチョコでした。


「美味しいですね」

私が言うと、お兄さんも口に入れました。
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