202号室の、お兄さん☆【完】
そして、お兄さんが信頼する麗子さんも、土日に出歩かない事を言及しなかったから、余計にそれは正しいと思わせた。


本当のお母さんからの虐待と、
麗子さんからの優しい虐待。

それがゆっくり長い年月をかけて、お兄さんをコントロールしているのだとしたら。



「で、は……、こ、このままで良いって思い、ま…すか?」

麗子さんは優しく首を振った。


「でしたら貴女に言いませんでしたわ。私、矛盾してますの。


自由になって欲しい。
変わらないで居て欲しい。

この長い月日、毎日考えておりました。

貴女は?」


麗子さんはハンカチで涙を拭きながら私に問う。



「貴女はこれを聞いて、どう思いました?
鳴海さんにどうなって欲しいと願いました?」


麗子さんの目は真剣で、透き通る様に美しくて、
全てを見透かすように真っ直ぐに、
私を優しく射抜いていく。

深呼吸をして、私は逃げないように両手を握り締める。

全身の震えは止まらない。


まだ、答えも分からない。

ただ、願うのは、私も麗子さんと同じ。






「だ、誰にも、お兄さんの土日を奪わせたく……ありません」

それが、過去のトラウマだとしても。
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