202号室の、お兄さん☆【完】

「みかどちゃんの言葉で返すとしたら……」

お兄さんは水やりを終え、植木鉢から滴り落ちていく水を眺めていた。
ゆっくり、ゆっくり、眺めていた。



「みかどちゃんには、関係ありません」



そう言って振り返ったお兄さんは、とても傷ついた顔をしていました。優しく、壊れそうな笑顔を携えて。


「でも……ありがとうございますっ」

お兄さんは、ゆっくり私の頬に手を伸ばす。
先ほど抓った部分を優しく上から下へ、撫でてくれた。



「みかどちゃんは、自分で気づいて進んで行くんですね。僕も……」

そう言って、ゆっくり手を離した。



「――僕も変わらなければ、いけませんね」

そう言って、強く手を握り締めました。



「分かってます。自分が異端で、本当の自分を隠して偽善的に振る舞っているのは」

「そんな事、ありません!」

お兄さんは、ジョウロを日の当たる所へ乾かすと、苦笑した。


「自分の事は、自分が一番分かってます。どうか、」

ゆっくり私の目を見て、言った。




――どうか、もう少し時間を下さい。


 
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