202号室の、お兄さん☆【完】
「意外とロマンチックですね。
じゃあ、お兄さんは塔の上に閉じ込められたラプンツェル姫なんですね」
「……お前、ラプンツェルの話読んだ事ねーだろ」
と言うと、岳理さんは読んだ事あるんだ……。
お姫様が塔の上に閉じ込められて、王子様に助けられる話じゃないのかな?
色々考えていたら、いつの間にか花忘荘の隣の高級マンション前に到着していました。
何も言わず車を止めたので、お礼を言ったまま、降りました。
――何だかあっさりし過ぎて寂しい気がします。
すると、岳理さんが窓をあげて私を静かに見つめてきました。
「みかど」
「はい?」
しばしの沈黙のあと、岳理さんはゆっくり言います。
「さっきの階段の所で落としたモンあるだろ」
「へ? へ?」
慌てて携帯やらカバンやら確認しますが、――何も無くなってなんていません。
何の事か、検討もつかず困っていると、溜め息を吐かれた。
「俺に会いに来てくれた気持ち、本当は何だか分かってんじゃねーの?」
「!?」
「あの場所に置き去りにすんなよ」
そう言って一言一言区切る様に言った。
「俺への気持ち、だ」