202号室の、お兄さん☆【完】
――ゼエゼエ苦しそうなお兄さんと、口元のゾウサンジョウロはとてもシュールです。
「悪ぃ。紙袋かビニール袋持って来てけれ」
「はいっ!」
同じ事を思ったのか、岳理さんが苦々しい顔で言うので私もすぐにキッチンへ向かいました。
けれど、
「――が、くり、くん」
……え?
振り返ると、上半身を起こして貰ったお兄さんが、驚いた顔で岳理さんを見ています。
「が……岳理くん?」
「……ああ」
「あなたは岳理くんですか……?」
「――岳リンでも良いケド?」
そう言うと、お兄さんは微かに笑って目に涙を浮かべました。
「僕……大学……飲み会……」
お兄さんはそう呟くと、また胸を押さえました。
「……岳理くん」
「ああ」
「岳理、くん?」
「ああ」
「岳理くん」
「何だよ、ソレしか言えねぇの?」
呆れたように言いながらも、
岳理さんの瞳も滲んでいました。
「何故、大事な親友を僕は」
そう言い終わる前に、頭を押さえまた苦しそうに息を吐き出しました。
「四年前の飲み会前の研究室だ、鳴海」
岳理さんは容赦なく言った。
「思い出せるか? その日を」