202号室の、お兄さん☆【完】
私は鍬とスコップを庭から持ってきました。
岳理さんに鍬を渡します。
「みかど?」
ガリっ!
スコップで壁を叩いたら、壁紙がハラリと垂れ落ちました。
けれど、まだ傷ひとつ着きません。
「……ああね」
ガッ
岳理さんも壁を叩きました。
壁はビクとも致しません。
「――ああ、俺。今から鍬持ってみかどの部屋に集合な」
岳理さんが電話で呼んでいる間、私はドラガンさんを呼んできました。
「奇襲とはなかなか策士じゃな」
ドラガンさんがスコップで壁を叩いて、
岳理さんが鍬で壁を傷つけて、
私が水でふやかして……。
けれど、まだまだ壊れません。
「み、みかどちゃん? 何し……てるの?」
「壊しています!!」
ドラガンさんが、出張帰りの葉瀬川さんを連れて来ました。
「ああ、面白そうだね」
気怠げにネクタイをほどくと、葉瀬川さんも鍬を握り締めました。
岳理さんと葉瀬川さんが鍬で壁を削って、
私とドラガンさんがスコップで壁を叩いて、
ガッ ガリッ
ガッ ガリッ
けれど、まだまだ壁は壊れません。