202号室の、お兄さん☆【完】


私は鍬とスコップを庭から持ってきました。
岳理さんに鍬を渡します。



「みかど?」


ガリっ!

スコップで壁を叩いたら、壁紙がハラリと垂れ落ちました。


けれど、まだ傷ひとつ着きません。


「……ああね」


ガッ

岳理さんも壁を叩きました。

壁はビクとも致しません。



「――ああ、俺。今から鍬持ってみかどの部屋に集合な」

岳理さんが電話で呼んでいる間、私はドラガンさんを呼んできました。



「奇襲とはなかなか策士じゃな」



ドラガンさんがスコップで壁を叩いて、
岳理さんが鍬で壁を傷つけて、
私が水でふやかして……。


けれど、まだまだ壊れません。

「み、みかどちゃん? 何し……てるの?」


「壊しています!!」


ドラガンさんが、出張帰りの葉瀬川さんを連れて来ました。


「ああ、面白そうだね」

気怠げにネクタイをほどくと、葉瀬川さんも鍬を握り締めました。


岳理さんと葉瀬川さんが鍬で壁を削って、

私とドラガンさんがスコップで壁を叩いて、


ガッ ガリッ
ガッ ガリッ

けれど、まだまだ壁は壊れません。
< 287 / 574 >

この作品をシェア

pagetop