202号室の、お兄さん☆【完】
「みかどちゃん、可愛いんですよ。ビスケットの」
「お、お兄さん!!」

慌てて私が止めると、タオルを頭に被ったまま、お兄さんは階段を上っていってしまった。


千景さんも、呆れながらも優しく頭を拭いてくれる。
私もほぼ濡れていないが念のために、定宗さんを拭く。


「誰にも怪我無くて良かったね。私にもアルジャーノン、紹介してよ」
「はい!」

千景さんにシャワーを借り、髪を乾かした後、苦戦しながらも、フギャフギャと暴れる定宗さんを、何とか2人係りで抱えて、2階に上がった。


すると、着替えたお兄さんが私の部屋の前で待っていた。


「じゃーん」

手には、花の形のクッキーの型。そして、あの短時間で数枚焼いてくれたらしい花型のビスケット。
そして、リボンを結んで作った花。

よく見ると、慌てて着替えたのかTシャツは後ろ前が逆ですし、髪はまだ雫が滴り落ちています。

「大丈夫。アルジャーノンもみかどちゃんも、いつかきっと綺麗な花が咲くよ」

お兄さんは、アルジャーノンの鉢植えにリボンのお花を飾ってくれた。


その横に、花型のビスケットを置くと、定宗さんは警戒しながらも、ゆっくりと口に入れてくれた。


ゆっくり、ゆっくり、

私の存在を、私の居場所を、

作ってくれたんだ。




「ありがとうございます」

私がそう言うと、お兄さんははにかんで頭をかいた。
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