202号室の、お兄さん☆【完】



「突然すまないね」

そう言って、ヘルメットを脱いだのは……岳理さんのお父さんでした。


「え……」





その夜は、バイト終わりに岳理さんが話があるから迎えに行くとメールがあったのですが、

――確かに岳理さんが来るとは聞いていませんでした。



花忘荘の前で待っていた私の前に現れたのは、袈裟を着た岳理さんのお父さん。

お、大型バイクに乗っています。


岳理さんのお父さんは私にヘルメットと上着を渡してくれました。



「寒いからしっかり着込んでね」

そう言われ、私は、

は、初めてバイクの後ろに乗りました!!

住職さんと大型バイク、不思議な組み合わせに戸惑いつつも、私は勇気を出してしがみつきます。

遠慮なくアクセル全開で飛ばすので、風がとても寒いです。


夜の道路を、車を追い抜かしながらバイクは孔礼寺へと進みます。




「岳リンは、夜中抜けられなくってさ」

信号で止まると、そうポツリと言いました。


「家に居るんだけど、そろそろ岳リンだけじゃ手に負えないみたい」

「へ……?」

そう言うと、信号が青に変わった。


岳理さんのお父さんはまたアクセル全開で出発します。




「鳴海んの事、だよ」



意味深な言葉を言い放ちながら。
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