202号室の、お兄さん☆【完】

「むむっ」

マウスをカチカチしながら、私は唸りました。

そして、台所の冷蔵庫の中身を見て、唾を飲み込みました。


……作れる?

白ワインなら、リヒトさんかトールさんが持っているはず?


「お前何してんの?」

「ぬはっ!」

いきなり背後から声がしてびっくりしてしまいました。


「け、気配を消さないで下さいよ」

「鳴海のメール、返事せずに台所で何してんの?」

あ、パソコンをメール画面にしたままだったようです。



「あの、お兄さんの送ってきた写真を」

「ああ。あの馬鹿みたいな満面の笑顔でホットケーキ食べてるヤツ?」

確かに、ホットケーキをハムスターの頬袋のように詰め込んではにかんでいた写真はありましたが……。


「違いますよ! 次の写真でお父様と夜ご飯食べているヤツです」
お兄さんに似た、年配の男の人は優しい微笑みを浮かべて幸せそうでしたが……。


「写真に写っていた、パエリアが美味しそうで……」


「パエリア?」


「岳理さん、エビ好きみたいですし」


「……よく気づいたな」

エビマヨやエビチリ、かっぱえびせんをお供に、よく晩酌してらしたから。


「台所見たら、白ワイン以外揃ってましたし」

「お前、作れんの?」

も、もちろん、


作れません!!
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