202号室の、お兄さん☆【完】
「小4の時にね、既にCカップはあったのよ」

杏仁豆腐のスプーンを口にくわえたまま、詰まらなそうに言う。

「体育の徒競走でね、糞男子たちにからかわれたの。『あいつ、おっぱい揺れてる~』『牛みたいでウケる~』とか、一字一句覚えてるわよ。
今からでも、出会ったらひっぱたいて股間に蹴り、入れたいぐらい」

そう言って、杏仁豆腐を全部食べ始めた。……一口だけあげるはずだったのに。


「それからは、変態に痴漢されるわ、ストーカーに合うは、――気になる人ができても、まず最初に胸を見られるわで、本っっ当に嫌な事ばかり」

スプーンを強く握りしめ、テーブルを思いっきり叩いた。


「でも、ね。嫌だけど、隠したり恥ずかしがったら、余計に馬鹿にされたり、妬まれたりするのよ。おばあちゃんにも、自慢はしても卑屈になるなって言われたわ。
だから、堂々と強調したり自慢し始めたら、楽しくて楽しくて、コンプレックスじゃなくて、私の武器になったのよねぇ」

フッと強気に笑う千景ちゃんは格好良かった。


「凄く前向きで千景ちゃんらしいね」

私に無い物、ぜーんぶ持ってて羨ましい。
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