キミ、カミ、ヒコーキ
「んなわけないでしょー」と旦那さんの肩を思いっきり叩きながら言った。旦那さん、とても痛そうだ。そして言葉を続けた。


「あたしの兄さんとこの子なんだよ。普段は一番上のお姉さんが面倒見てるんだけど、今日は用事があるみたいでねえ」


「ふーん。あたしのバイトが始まる12時からはどうすんだ?」

「12時までにはお姉さんが迎えに来てくれるみたいだから。確か信子ちゃんと同じくらいの――」


「ばーば、ぶーぶ」

奥さんの話を潔く遮ったのは、一番下と思える女の子だった。頭には、不格好な水玉のぼんぼんがついている。


「あら、すっかり気に入っちゃったみたいね。」

「ばーば、ぶーぶぶーぶうー!」

「じゃあ、10時くらいにお姉さんから連絡あると思うから、それまで宜しくね」


そう言うと、つくね夫妻はいそいそと店の奥へ姿を消した。


「ぶーぶぶーぶ! うーうーう。ぶーぶ」

「なんだ? ぶーぶ……あっ、車かい? あーあたしダメなんだよ。乗り物酔いするから」


「ぶーぶ?」

「そうだ。姉ちゃんはな、ぶーぶ嫌い。わかったか? よし、これでお前もまた一つ賢くなったな」

「たぁい」


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