時を越え、君を知る。


「…有難う。俺達のことを考えてくれて。」
「考えることしか、できないから…。」


わたしはこの日本が戦争でどうなるか、知っている。
けれど、何もできないから。
見ていることしか、できないから。


「須藤、俺はお前のおかげで救われたんだ。…霧島もそうだ。だから、有難う。」
「そうそう。陽菜は自分が思ってる以上のことをしてるよ。」
「「!」」
「ね、長門さん。」
「霧島…、お前、!」


艦砲の上に霧島さんが立っていた。
それに驚いて、わたしは長門さんの腕から離れた。


「出発前に挨拶しとこうかと思ってね。陽菜が未来に帰ったら、もう会えなくなっちゃうから。」
「霧島さん…。」
「陽菜、俺からもありがとう。陽菜に会えて良かった。じゃあ、また会えたら嬉しいけど、とりあえず元気でね。」
「霧島さんも、お元気で。」
「うん。時間だから行くね。」



“また会えたら”

その言葉が、なんだか胸に染み込んだ。




「…霧島も礼を云っていただろう。だから、そんなに思い悩むな。戦争を知らないことはいいことだ。平和になったということだからな。お前はお前の時代を生きていればいいんだ。そして二度とこのような出来事を起こさぬよう、それがお前達、未来の者がやらなければならない。」
「……そうですね。長門さん達の努力が無駄にならないように。」
「ああ。無駄にしてくれるなよ。」
「はい。」



長門さんを呼ぶ声が聞こえた。
どうやら、そろそろ出発のようだ。


頬に残った涙を拭き、空を見つめ、思う。




ここにきて、良かった。


大切なものに、気付いたから。



< 69 / 104 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop