ラブバトル・トリプルトラブル
 「兄貴や俺とは違い、大は教師になるために勉強しなくちゃいけないから、俺達が相部屋なら問題ないな」


「俺はヤだよ。やっと一人部屋になったんだ。これからは手足が伸ばせる生活をしたいんだ」


「何言ってるんだ兄貴。二段ベッドでも同じようなものだったくせに」

直樹君はそう言いながら笑いだした。


「中村さん。兄貴は凄いんだよ。二段ベッドの下で寝ているんだけど、大の字なんだ。上に寝てたらきっと墜落すると思うよ」


「何でそんなこと此処で言うんだ」
秀樹君はプイッと横を向いた。




 私がこの家で生活していくためにはこの中の三人とルームシェアしなくてはいけないようだ。
だれと相部屋になりたいか私が決めなくてはいけないらしい。

私は又も考えあぐねていた。


ルームシェアはイギリスでは一つの部屋に複数で住むこと。

フランスではコロカシオンと言い、家賃の分配の意味だそうだ。
それぞれの国でそのスタイルは違うようだ。

でもアメリカでは一つの家を共同で借りて住むことらしい。
一つの部屋に共同で住む人はルームメイトと言って区別しているそうだ。


陽菜ちゃんがルームシェアのことを話題に出した後ですぐに調べてみたんだ。


私は誰とそのルームメイトになるのか結論を出さなくてはいけないのだ。




 私に与えられた時間は僅かだ。
その間にご飯を作り、後片付けをしてお風呂に入らなければならない。

私はこの家に置いてもらうために精一杯頑張ろうと決めていた。

でも、張り切ったのも束の間。
引っ越し蕎麦の出前が届けられた。


「引っ越しと言えばこれだろう。気を利かせて頼んでやっておいたよ」
大君が得意そうに言った。


「流石気配り上手。松宮高校のムードメーカーだけのことある」
私は料理する時間を取られなかったことを感謝していた。




 だってきっと、私の料理なんて食べられたもんじゃないよ。
私はそれを自覚していた。
だからボロが出ないように、庭の管理に逃げたのだった。


でも、此処に置いてもらう以上料理はならなくちゃいけないと思っていた。


(ねえ、直樹君。何が好きなの? 直樹君の好きなものなら私何でも頑張っちゃうよ)




< 172 / 228 >

この作品をシェア

pagetop