ラブバトル・トリプルトラブル
 試合がある朝だから、長尾家は賑やかだ。
実はこれは珠希のやっていた恒例の行事だった。

国体選手の代表を選ぶ県大会の朝などは特に忙しい。
そんな時珠希は家族を巻き込んで手伝わせるのだ。
でも殆ど邪魔になる。
それでも珠希は嬉しかったのだ。
家族と一緒にワイワイ騒ぎながら試合に準備をすることが。


珠希は家族からパワーを貰いたかったのだ。

それは勿論、正樹の愛が一番だった。
だから正樹は出来る限り珠希の応援に馳せ参じたのだった。

でもそれは、試合のない日に限られていた。

だから尚更……
愛する妻に熱いハートを届けたかったのだ。




 美紀は試合開始の一時間以上も前に会場入りしていた。

ストレッチングとウォームアップをするためだ。
野球と同じく、それがスムーズに体を動かず原動力になるのだ。

テニスなどのラケット競技も野球と大差なく、太もも、腰、胸、肩などを鍛える。

ただ移動の激しいテニスは、足を鍛えることが重要になってくる。
高速でボールの落下位置移動して、急ブレーキきをかけられた足は時に悲鳴を上げる。


大腿四頭筋やハムストリングスなどに掛かるストレスが主な原因だ。

それを軽減するためにも体の芯を温かめるの行為は欠かせなかったのだ。


試合が終わった後のクールダウンも同様に重要な鍵になる。
ウォームアップとクールダウン。
これらが、事故のないスポーツの基本なのだ。


ウォームアップの時には柔軟体操のように座っては行わない。
土が付く。
ことを嫌うのだ。

どうやら、相撲の敗けを意味する言葉からきた縁起担ぎのようだ。

それだけみんな勝ちたいのだ。
拘りだと解っていても、そうしないと落ち着かないらしい。




 試合開始直前。
選手達はネットをはさんで集合し、ジャンケンをする。

負けたプレイヤーはラケットのへッドを地面につけて回すことが義務づけられている。

所謂ラケットトスは、美紀の手にしていた珠希の二本シャフトが使われることになった。

つまりジャンケンに負けたのだ。
でも相手側は言い当てられなかった。

公認マークがついている方が表で、回っているうちに表か裏かを言わなければならないのだ。


だからトスの勝者は美紀達だった。


「サーブ権でお願い致します!」
美紀は力強く言った。




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