好きだったよ、ずっと。【完】
「どうなってるって、見たまんまだけど」



そう答えると、渡辺くんはニヤリと笑った。



「ノーブラってこと?」



「そういうこと」



わたしがそう答えれば、渡辺くんはお皿とケーキを挟みあげてるわたしの後ろに立つと、背中をツツツーと指でなぞられた。



ゾクリとし、「やめて…」と言うも止めてはくれなくて。



この服にしたことを、初めて後悔した。



もうこの際ケーキなんてどうでもいいと、適当に選び席に戻れば、渡辺くんもちゃっかり付いてきて。



ただの酔っ払いのはずなのに、春夜にわたしがノーブラだということをニヤニヤしながら、自慢げに話した。



春夜は春夜で、とんでもないことを言ってくるし…。



春夜の発言で、今日の夜のことを想像したら、ドキドキが止まんなくなった。



なのに、今はドキドキすらしない。



寧ろ、イライラしてる。



「お手洗い、行ってくる」



二人に聞こえるように言い残すと、わたしは部屋を出てすぐの女子トイレに駆け込んだ。



個室に入り、鍵をかける。



蓋が閉まった状態の便器にお尻をのせ、「はぁ…」と深い溜め息を吐いた。
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