冬の月【短編】
大切な人
学校の帰り道。


「寒いー!!!」

俺の隣には大好きな人。
冬なんだから当たり前。
そう思うことを思いっきり叫ぶ絢芽(アヤメ)。

「うっせ…。」

ポツリと呟くと、絢芽がこっちを見た。

「遼(リョウ)は、寒くないわけ?」

プクーッと膨らませた頬は、寒さで赤く染まっている。

「寒い。けど、うるさいのも嫌だ。」

絢芽がこれ以上怒らないように、少し小さめの声で答える。


「だってさぁ、寒いーー!!!って叫んだら、暖かくなる気がするんだもん。」

俺からしたらよく分からない理由。
でも絢芽はあきれた俺を無視して、また叫びだす。


「寒いーー!!!」


そして俺を見て、得意げに笑う。
なんとなくいつも冷めている俺は、そんな絢芽の多彩な表情に癒される。
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