冬の月【短編】
「ハァ…。」

柄にもなくそんなことを考えていた俺にあきれて大きく空を仰ぐ。


「月…。」


冬の、寒くて透き通った空気のおかげか。
それとも隣にいる絢芽のおかげか…
見慣れたはずの月が輝いて見える。


「満月だね。」

俺の視線に気付いた絢芽が呟く。

「綺麗だな。」

なんとなく儚いけど。
そんなことを思いながら言った。


「綺麗だねぇ。」

突然足を止めて、絢芽は月を見上げる。


月に照らされて、少し青白く見えるその横顔。


弱々しい。
そのまま月の光にさらわれそうに見えた。
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