sweet wolf
「やっぱり杏ちゃんはすごいね!!」
授業が終わった後、直樹が目をまん丸にしてあたしに言う。
「当然だし」
ふんぞり返って言うあたしに、
「うざい」
遠くから小さな声が聞こえる。
そして続く笑い声。
わざと声のする方を向くと、いじめ女子たちと目が合った。
やっぱりこいつらか。
そして、こいつらの中には恐らく狼がいないから、内輪だけで悪口ごっこをやっているのだと気付く。
いや……仮に狼がいたとしても、いないと信じ込んでいるだけかもしれない。
陸斗の集団のように。
だけど、何となく女子集団の中には狼はいないと感じた。
それは、今朝会った狼は男だけしかいなかったからかもしれない。
こんな教室にいても不快だ。
あたしの疲れ切った神経をさらにすり減らす。
あたしは立ち上がり、教室を出た。