sweet wolf






ひっそりとした廊下に、その部屋はあった。

ドアに手をかけると、九月だというのにひんやり冷たい。

その冷たさで、はっと気付いた。




あたし、あんなに狼を嫌っているのに、狼にすがっている。

弱くて卑怯な女だ。





それでも誰かに会いたくて。

この心の穴を埋めたくて。

あたしはドアをゆっくり開いていた。






カーテンが開かれたままの明るい室内の光が漏れる。

それが思いのほか眩しくて、目を細めるあたし。

そんなあたしに向かって、



「こんな時にどうした」



静かに話しかける声が聞こえた。




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