sweet wolf







それから、どんな様子でここにたどり着いたのか分からない。




蓮はあたしを抱いて、ただ無言で歩いた。

途中、誰かとすれ違ったかも分からない。

ただあたしの鼓動は相変わらず速いことと、蓮に捕まってしまったことだけは確かだった。






「重ッ」




不意に蓮が呟き、あたしを降ろす。

そのままゴミみたいに投げ捨てられるのかと思いきや、ガラス細工でも置くようにそっと地面に降ろされる。

そういうのがいけないんだ。

ふとしたところで優しさが見え隠れして、あたしは蓮から離れられなくなってしまう。



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