sweet wolf






そのまま、あたしはクラス全員の注目を受けて授業に出た。



勉強なんて大嫌いなあたし。

教科書を見るのも嫌で、教科書を閉じたまま外の景色を眺めていた。





校庭に植えられている木々は、青々と葉を光らせている。

とんぼが宙を舞い、蝉の鳴き声が聞こえる。

空には入道雲。

遥か遠くの山々には、すでに秋の気配が感じられた。




あぁ、日本に帰ってきたと実感する。

長い長い七年半だった。

あたしの記憶の中にいる彼は、今もあたしを待っていてくれるのかな?






ふと、鞄に目を向ける。

紺のサブバックに付けている、ボロボロの兎の小さな縫いぐるみ。

彼がまた会えるようにとあたしにくれた、大切なお守り。





あたしは……



あなたに会いたい。




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