sweet wolf

遊び人狼









「なーんだ、そんなことか」




直樹はいつもの笑顔で笑っていた。




「分かってるよ。

杏ちゃんには大宮さんしかいないってこと」



「ごめん……」




あたしは直樹に頭を下げた。





直樹は、こんなガサツで馬鹿なあたしを好きだと言ってくれた。

すごく嬉しかった。

だけど、やっぱりあたしの気持ちは蓮だったのだ。

直樹を振り回しておいて、散々迷惑をかけて、この仕打ち。

なのに、直樹は笑顔で笑い飛ばしてくれる。

やっぱり直樹は神だ。






「何言ってんだよ、杏ちゃん?

杏ちゃんらしくないなぁ!」




その言葉で我に返る。



最近のあたしは比較的おとなしい。

転校してきた頃のように狼に楯突いたり、直樹を怒鳴り飛ばしたりすることなんてなくなっていた。

あたしは、既にこのおかしな学校に馴染んでしまったのかもしれない。



< 282 / 312 >

この作品をシェア

pagetop