sweet wolf





「大宮君」




不意に甘ったるい声が聞こえ、胸がどきんとする。

廊下の陰から階段を見ると、綺麗な女の先輩と向き合っている蓮がいた。

蓮はあたしに背を向けているため、表情が分からない。

女は再び口を開いた。





「最近、全然遊んでくれないじゃない?

あの後輩ばっかり気にかけて」






ずきんと胸に刺さる言葉。

聞くまでもなく、彼女はセフレの一人なのだろう。




訪れる沈黙。

蓮はポケットに手を入れたまま、黙って突っ立っている。

この沈黙がやけに恐ろしい。




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